「五大商社には届かないが、それに次ぐ年収水準」と評される兼松。実態はどうなのでしょうか。
2025年3月期の有価証券報告書によると、兼松の平均年収は1,143万円(平均年齢38.2歳)です。前年の1,009万円から134万円の大幅増となり、再び1,100万円台に回復しました。
兼松は五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)に次ぐ「準大手商社」に位置づけられ、豊田通商や双日と並ぶポジションにあります。しかし平均年収だけを見れば1,100万円超と、上場企業全体の中ではトップクラスの水準です。しかも平均年齢38.2歳は五大商社(概ね42〜43歳)より若く、年齢を揃えて比較すれば五大商社との差はさらに縮まります。
本記事では、有価証券報告書や口コミサイトの情報をもとに、兼松の年収を「役職別」「年齢別」「商社業界内比較」の切り口で詳しく解説します。
兼松の平均年収推移|業績連動で変動が大きい
有報データの5年間推移
兼松の平均年収推移を確認しましょう。
| 決算期 | 平均年収 | 平均年齢 | 従業員数 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 1,143万円 | 38.2歳 | 812名 |
| 2024年3月期 | 1,009万円 | 38.3歳 | 812名 |
| 2023年3月期 | 1,204万円 | 38.5歳 | 798名 |
| 2022年3月期 | 931万円 | 38.1歳 | 788名 |
| 2021年3月期 | 857万円 | 37.8歳 | 795名 |
※出典:兼松 有価証券報告書(各年度)、IRBANKより作成
最も目を引くのは年度ごとの変動幅の大きさです。2023年3月期には1,204万円を記録しましたが、翌年は1,009万円に下落し、2025年3月期に再び1,143万円へ回復しています。この振れ幅は、兼松の年収における賞与比率の高さを如実に物語っています。
業績連動の背景
兼松の2025年3月期の連結収益は1兆509億円(前年比+6.6%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は274億円(同+18.3%)と増収増益を達成しました。モバイル事業や航空宇宙事業が好調だったことに加え、ICTソリューション事業の成長が業績を押し上げています。
商社の給与は業績に直結する傾向が強く、とりわけ兼松は賞与の変動幅が大きいため、好業績の年には平均年収が大きく跳ね上がります。2023年3月期に1,204万円を記録したのは、資源価格高騰や円安による業績好調が賞与に反映された結果です。
兼松の給与体系|「職群」制度と年功序列的な昇給
基本的な年収構成
兼松の年収は以下の要素で構成されています。
年収 = 基本給 + 残業代 + 賞与(年2回)
兼松は「職群」と呼ばれる職位区分で基本給が決まる仕組みを採用しています。入社時は「職群1」からスタートし、社内試験やTOEICスコア等の要件を満たすことで「職群2」「職群3」と昇格していきます。昇格するたびに基本給が段階的にアップする仕組みです。
口コミによると、入社2年目から基本給が5万円以上の大幅増となり、その後しばらくは緩やかに上昇するパターンが一般的です。入社4〜5年目で「職群2」に上がるのが標準的なペースとされています。
賞与は基本給の5〜6ヶ月分
商社業界に共通する特徴ですが、兼松も年収に占める賞与の比率が非常に高いのが特徴です。賞与は年2回支給で、基本給の5〜6ヶ月分が一般的な水準です。業績が好調な年にはそれ以上になるケースもあり、口コミでは「ボーナスが8ヶ月分程度」という声も見られます。
賞与の計算は「職能(コーポレート系)」と「営業」で制度が分かれており、職能部門は会社の業績連動、営業部門は個人の成績も加味されます。ただし、全体としては年功序列色が強く、個人差がつきにくい傾向にあるようです。
MBO制度と評価の実態
兼松ではMBO(目標管理制度)を導入しており、期首に設定した目標の達成度合いを期末に上長が評価します。ただし口コミでは「実質的には年功序列であり、差がつきにくい」という声が多く見られます。
入社7年目ごろまでは横並びの評価が中心で、それ以降は評価と部門業績によって徐々に差がついてくるのが一般的なパターンです。これは五大商社と比べても年功序列の傾向がやや強い印象があります。
昇格にはTOEICスコアが必要
兼松では昇格にTOEIC600点以上が求められます。さらに海外駐在の場合、非英語圏ではTOEIC600点以上、英語圏ではTOEIC700点以上が基準となっています。
商社としてはそれほど高いハードルではありませんが、昇格に直結する要件であるため、入社後早期に取得しておくことが重要です。
【役職別】兼松の年収テーブル
兼松の役職は大きく「非管理職」「課長」「部長」に区分されます。
| 役職 | 年次目安 | 年収レンジ |
|---|---|---|
| 非管理職(若手) | 1〜3年目 | 500万〜600万円 |
| 非管理職(中堅) | 4〜8年目 | 700万〜800万円 |
| 非管理職(シニア) | 9〜14年目 | 800万〜1,000万円 |
| 課長クラス | 15〜20年目 | 1,000万〜1,200万円 |
| 部長クラス | 20年目以降 | 1,500万円以上 |
※口コミサイト・転職エージェント情報をもとに作成。業績年度により変動します。
1,000万円到達は15年目前後
兼松で年収1,000万円に到達するのは、課長への昇格が見えてくる15年目前後(35歳〜40歳)が一般的です。五大商社では30歳前後で1,000万円に届くケースが多いため、到達時期はやや遅めといえます。
ただし、上述の通り兼松は賞与比率が高く、業績の良い年には非管理職でも年収1,000万円に近づくことがあります。2023年3月期のように平均年収が1,204万円を記録した年には、中堅層でも1,000万円を超えた社員が相当数いたと推測されます。
課長・部長クラスの年収
課長クラスに昇格すると年収は1,200万円以上、部長クラスでは1,500万円以上が見込めます。役職定年は55歳とされており、五大商社(概ね57〜60歳)よりやや早い点は留意が必要です。
【年齢別】兼松の年収推移
兼松は年功序列的な昇給カーブが比較的安定しているため、年齢別の年収推移は予測しやすい構造です。
| 年齢 | 年収目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 25歳 | 500万〜600万円 | 初任給29万円+残業代+賞与。寮住まいで可処分所得は高い |
| 28歳 | 600万〜750万円 | 職群2へ昇格する時期。基本給が段階的にアップ |
| 30歳 | 700万〜900万円 | 海外駐在が始まる社員も。駐在手当で実質年収は大幅増 |
| 35歳 | 800万〜1,100万円 | 業績次第では1,000万円超も。課長昇格の一歩手前 |
| 40歳 | 1,000万〜1,300万円 | 課長クラス。管理職として安定した高年収 |
| 45歳 | 1,200万〜1,500万円 | 部長候補。役職と評価次第で1,500万円超も |
※口コミサイトの情報をもとに作成。業績年度や部門で大きく変動します。
年収カーブの特徴は、入社後〜30代前半まで安定的に上昇し、課長昇格(35〜40歳)でジャンプするというパターンです。五大商社のように20代後半で急上昇するタイプではなく、長期的に着実に積み上がる構造になっています。
兼松の初任給と新卒年収

2024年入社の初任給は、学部卒・院卒ともに月給290,000円です。この金額は商社業界の中でも高水準であり、賞与(4.5〜6ヶ月分)と残業代を加えると、新卒1年目の想定年収は約500万〜600万円になります。
なお、兼松には「広域採用(勤務地の制限なし)」と「エリア特定採用(勤務地を限定)」の2コースがあり、エリア特定採用の場合は初任給が低めに設定されています(以前の情報では月給21万円程度)。
年収レンジの差は長期的に拡大していくため、コース選択は慎重に検討する必要があります。
【商社業界比較】兼松の年収はどの位置?
兼松の年収を商社業界の他社と比較してみましょう。
| 企業名 | 平均年収 | 平均年齢 | 分類 |
|---|---|---|---|
| 三菱商事 | 2,090万円 | 42.7歳 | 五大商社 |
| 三井物産 | 1,899万円 | 42.3歳 | 五大商社 |
| 伊藤忠商事 | 1,753万円 | 42.3歳 | 五大商社 |
| 住友商事 | 1,605万円 | 43.1歳 | 五大商社 |
| 丸紅 | 1,654万円 | 42.2歳 | 五大商社 |
| 豊田通商 | 1,257万円 | 43.0歳 | 準大手 |
| 兼松 | 1,143万円 | 38.2歳 | 準大手 |
| 双日 | 1,371万円 | 42.3歳 | 準大手 |
※出典:各社有価証券報告書(2025年3月期・直近期)
年齢差を考慮した実質比較
数字だけ見ると兼松は準大手商社の中でも低めに見えますが、平均年齢が38.2歳と最も若い点を見落としてはいけません。他社が42〜43歳であることを考えると、同年齢で比較した場合の差はかなり縮まります。
また、兼松は従業員数が約800名と少数精鋭の体制であり、一般職の比率も年収水準に影響します。総合職に限定すれば、実態年収はさらに高い水準になると推定されます。
なぜ五大商社との差があるのか
五大商社との年収差の最大の要因は事業規模と利益水準の差です。兼松の連結収益は約1兆円で五大商社(5〜20兆円規模)とは大きな開きがあり、純利益も274億円と五大商社の数千億円〜1兆円規模とは比較になりません。
一方で、兼松には五大商社にはない独自の強みがあります。1990年代の経営危機を乗り越え、資源投資に依存しない事業構造を確立したことで、資源価格の変動に左右されにくい安定的な収益基盤を持っています。電子・デバイス、ICTソリューション、食料、車両・航空など、非資源分野に特化した事業ポートフォリオは、長期的な安定性という意味ではむしろ強みです。
兼松の福利厚生・働き方
社宅・独身寮が充実
兼松の福利厚生で特筆すべきは住宅支援です。
入社後5年間は会社が借り上げたマンションに月数千円で入居できる独身寮制度があり、家賃をほぼゼロに抑えられます。既婚者向けの社宅制度も整備されており、この住宅補助を加味した実質的な可処分所得は、額面年収以上に高いといえます。
ブロンズウイーク制度
兼松の独自制度として注目すべきなのが「ブロンズウイーク制度」です。3連休や飛び石連休の前後に有休を組み合わせて4連休以上を作る仕組みで、毎年4月に全社員が計画表を提出します。この制度により有給休暇取得率は73.1%と高水準を維持しており、商社業界の中でも働きやすい環境が整っています。
残業と働き方改革
平均残業時間は月17.5時間で、商社としては比較的少ない水準です。水曜日はノー残業デーとされ、20時以降の残業は上司の事前承認制、22時以降は原則禁止と、労働時間管理は厳格です。フルフレックス制度や時差出勤制度も導入されており、ワークライフバランスを重視する姿勢が見えます。
ただし営業部門では海外取引先とのやり取りで時間外対応が発生するケースもあり、部署による差は大きいようです。
まとめ:兼松の平均年収は1,143万円

兼松の年収・給与のポイントを整理します。
- 2025年3月期の平均年収は1,143万円(平均年齢38.2歳)。前年から134万円増で再び1,100万円台に回復
- 賞与は基本給の5〜6ヶ月分が一般的。業績連動のため年度ごとの変動が大きく、好調年には8ヶ月分に達した年も
- 「職群」制度で基本給が決まる。年功序列の傾向が強く、入社7年目頃まではほぼ横並び
- 年収1,000万円到達は15年目前後(課長昇格時)。五大商社よりやや遅いが、商社業界全体では高水準
- 役職別年収は非管理職500万〜1,000万円、課長1,000万〜1,200万円、部長1,500万円以上
- 新卒初任給は月給29万円(学部・院卒同額)。1年目年収は500万〜600万円が目安
- 独身寮・社宅が充実。月数千円で入居可能なため、実質的な可処分所得は額面以上
- 残業月17.5時間・有給取得率73.1%と商社業界で上位の働きやすさ。ブロンズウイーク制度が独自の強み
- 昇格にはTOEIC600点以上が必須。海外駐在はさらに高スコアが求められる
- 資源投資に依存しない事業構造で、業績の安定性は五大商社より高い側面がある
※本記事は2025年3月期の有価証券報告書および各種口コミサイトの公開情報をもとに作成しています。年収は業績年度・評価・役職等により大きく変動します。最新情報は公式サイトや転職エージェント経由でご確認ください。












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